マンガばっかり

マンガ批評

カズン


★★★★★
いくえみ綾がzipperに連載していたマンガ。
このほど3巻が出版され、無事に完結した。
カズンというのは、主人公・つぼみのいとこのノニのことで、登場回数は少ないが、モデルとして大人気の彼女の存在がつぼみを焦らせたり、安心させたり… という微妙な存在として小さくて大きな存在感を持っている。
こういう存在をタイトルにもってくるというのもスゴイもんだな。
A首相がやっている中央教育審議会の輩などに読ませたら、フリーターの生活を絶賛しているとか、痩せること=美しさ=人間の価値なのか?? といったくだらない批判を受けそうだが(おまえらがくだらない!)、見るべき所はそこではない。
このマンガにはいじめられたりクスリをやったり、あるいはとっかえひっかえ相手を変えてセックスしたりという、いかにもイマドキっぽい少コミっぽい現代風俗はまるで描かれていない。
ここに出てくるのは、とても普通な少女が、ちょっといい感じの男の子と出会い、何かがあるかなとも思うけれど、結局、何も起こらないまま終わってしまうという、それこそストーリーを簡単に言ってしまえば「なんだそれ?」というようなものである。
しかし、そこをリアルに丁寧に、でも、ちょっと夢を見せてくれるようなマンガにしているところがいくえみ先生の偉いところである。
大ブームにはならない。
アニメにもならないし、映画化もされないと思うけれど、それでいいと思う。
そもそもふつうに生きている人たちの生活はアニメにはならないものだからね。
いつか「2006年ってどんな時代だった?」と聞かれたら、このマンガを出せばいいと思う。

作品の舞台は札幌です。
気付かない人は最後まで気付かないと思うけど…