マンガばっかり

マンガ批評

ひかりのまち


★★★
最近、注目をあびることの多い浅野いにおのマンガ。
とても健康的でさわやかでマイホームチックな「ひかりのまち」なる新興住宅地には、さまざまな影のドラマがあるのだった…
しかし、これって、あまりにも使い古された手法ではないだろうか。
影のドラマなんていうものさえも、あんまり起こらなかったりするのが「ひかりのまち」の健全すぎて退屈きわまりない部分なのであって、日常が日常であることの中からドラマを見つけ出すのが求められているのではないだろうか(「団地ともお」みたいに)。
例えば、p.9に団地の主婦たちの会話として「あらあら奥さん」「いや、でもそんな。」「……なんておっしゃって。」「おほほ、奥様こそ……」というセリフが入っているが、この言葉遣いは、既に21世紀のものとはかけ離れていると思う(近所のスーパーで聞き耳を立ててみれば理解できるはず)。
ここに書かれている「現実」というのが、すでに架空のもの、過去のものになっているのではないかと思わせるのは、例えばこういう細部でも露呈されてしまっている。
ただ、不思議っ子(を装う?)の西山さんや、ただただ人がいいだけ(プラスでもマイナスでもない)のようなサトシといった、新しい時代が、いつしか生み出してしまったようなタイプの人たちを登場させているのは慧眼で、やはり浅野いにおは落とせない存在であるとは思う。