マンガばっかり

マンガ批評

レナード現象には理由がある


★★★★★
川原泉による2006年の作品集。
あらゆる知識を貪欲に取り入れ、しかし、それを変にペダンチックにではなく披露し、脱力系のギャグの中にも向日性の見える佳作。
固定的な川原ファンに訴えるだけでなく、新しい時代の読者たちをも取り込もうとしているかに見えるところが印象に残った。
上昇できるところまで上昇しきってしまったかに思われる山岸涼子が「テレプシコーラ」で、萩尾望都が「バルバラ異界」で、吉田秋生が「海街diary」で… 固定ファンの期待を裏切らないでいながらも、それぞれ新しい読者層を引き入れ、少女マンガの世界をも広げようとしているのに似た感じを受けた(年代は必ずしも一緒じゃないけど)。
ドラクエとFFで行くところまで行ってしまったゲーム界が、DSやWiiで新しい世代を獲得していっているのと似ているとも言えるかもしれない。
ことに最終話などはBLっぽいが、賛成派のみでなく、準賛成派、反対派にも共感をもって読める作品ではないかと思った。