マンガばっかり

マンガ批評

敷居の住人


★★★★★
志村貴子が1997年12月から2002年7月まで月刊コミックビームに連載したマンガ。
1巻を見ると、まことに岡崎京子(より絵はうまいけど)であった!
コマの割り方やらトーンの使い方、中学生の分際で髪を緑に染め、学校でもタバコをくわえる美少年の登場…
2010年代の今になってみると「こんな人いないよ!」と思われるかもしれないが、これは岡崎京子の純粋な継承者だと思った。
が、それから先は、いつまでたっても岡崎らしいベタな大事件も大波乱も起こらず、志村の世界が広がっていく。
好き同士の男女がいれば、黙って付き合ってゴールインすればいいのに、このマンガでは好き同士なはずなのに、友達の恋人が好きな気がしてきたり、先生(あるいはその奥さん)が魅力的に見えたり、ごちゃごちゃごちゃごちゃしていく。
そしてそのごちゃごちゃというのは、どれもこれも本当にくだらない。
しかし、そう、そういうくだらない見栄やら意地やら正義感やら猜疑心やらで、自分がいったい何をしたいのかしたくないのかさえもわからず、ただただ暴走したり、逆走したり。右に行ったかと思うと、なぜか下に行く… みたいな落ち着かなさこそがこの年齢だったのだ!
じわっと気恥ずかしく、懐かしく、酸っぱいマンガであった。