マンガばっかり

マンガ批評

ルポルタージュ


★★★
売野機子による恋愛がなくなった時代におけるラブストーリー。
乾いた感じで、それはそれで嫌いではないのだが、そもそも恋愛がなくなる理由が、よく理解できない。
今の若者たちも「失敗を恐れ、嫌な思いをしてまで恋愛なんかしなくていいや」という思いが強いらしいのだが、近未来になったら、もっと恋愛なんていうものは難しくなって事実上なくなるのではないか… ということから作者は世界観を組み立てていったのだろう。
まぁ、フィクションなのだから、どういう設定を取ろうが勝手なのだが、恋愛がなくなる時代、にしては、もやもやとした人たちが多すぎて、これほどもやもやしている人が多ければ、恋愛ではなくても、自分が恋愛をしたような錯覚に陥る人だってたくさん出るだろうし、恋愛の成功者が神のようにあがめられる… ということも出てきそうだ。
そのあたり、うーん、そうかぁ、なるほどね、というような納得感がなく、作品世界の作りこみが緩すぎたと思う。
本当に相手を愛しているか分からない、なんていうことは、いつの時代だってあった。
本当の愛であっても5分で醒めることだってあるし、また、ウソの愛だって死ぬまで続くこともあるのは、人間が人間になった時代からずーーーーっと続いていることなのだが、それをひっくり返すようなものは、たとえフィクションの世界の中ではあっても作り上げることができなかった、ということだ。
(No.1031)