マンガばっかり

マンガ批評

デザイナー渋井直人の休日

★★★★★

渋谷直角による50代になるデザイナーとその事務所の物語。
人はいいのだが、まったくモテず、最悪ではないにしても仕事についてのカンや能力も、それほどパッとしたものでもない…
デザイナーの世界がどうなっているのかはわからないが、まぁ、たぶんこんな感じなんだろうなぁ、と思う。
われわれ研究者業界を見渡してみても、今はやりの〇〇さんはこんな感じだなぁと思ったり、往年のはやりだった△△さんもこんなかもなぁ、と思ったりもする。
そしてイケてはないけれど、それほど人間としてヒドいわけでもないという渋井さんのなんと自分に似ていることか!
『さよならアメリカ』でも思ったことだが、渋谷直角はイケてる存在にあやかって生きていきたいイタイ人を曝して冷笑する人かと思っていたが、イタイは単にイタイでは終わらないし、イタクない存在という人がどれほどイタイかについても十分に意識し、問題化できている人だと思う。
エンタメなので完全にリアルに徹して坦々と日々を書き綴ることはなく、誇張もあるのだろうけれど、その枠の中での表現としては非常に優れたものであったと思う。

(No.1218)