マンガばっかり

マンガ批評

ゆびさきと恋々

★★★

森下suuが現在連載しているマンガ。
『日々蝶々』でも知られるユニット漫画家だが、今回は生れた時から耳が聞こえないという女子大生の雪に逸臣が接近し、幼馴染で地道に手話を学んでいた桜志が嫉妬する… という物語。
聴覚障碍者の登場するマンガとしては『聲の形』がヒットしたのも記憶に新しいが、西宮硝子がかわいかったので石田が心変わりしたという風にしか思えなかった。
本作でも少し天然だが美人の雪だからイケメンの逸臣が接近したのかと思っていた。
しかし、逸臣は各国語を学び、世界中を旅してまわるという人間で、しかし、親とも離れて生活していることから、自分のよって立つべきものが何なのかが今一つ掴み切れていない。
そこでこんな近隣に自分の知らない異文化があるということに気づき、その興味が雪への恋に重なっていったのだとすれば、まぁ、あるかもな、と思う。
何も聴覚障碍者と普通にコミュニケーションを取ろうとするのがダメだとか、そうそう恋愛には至らないよ、などと冷笑したいわけではない。
ただ、この2020年代の日本を舞台にすれば、どうしても現状からストーリーは作られざるをえないのであって、そんな差別なんて露ほどもないよ、などと天使のように物語を進めてしまうのは難しいのではないか、と思うまでだ。
弱い者いじめ、強い者忖度が横行するのが今の日本なので…
(No.1238)