マンガばっかり

マンガ批評

コーポ・ア・コーポ

★★★

岩浪れんじ、がGOTという出版社から刊行したマンガ。
アマゾンで勧められているのを見て購入。
1巻の帯には私小説芥川賞作家・西村賢太(追悼…)が大絶賛とあったが、それも頷ける感じ。
大阪を舞台にしたアパートの居住者を中心とした人々の生業が描かれている。
よくできているとは思うのだが惹きつけられない。
自分が体験していなくても「うわ、これはリアルだ!」と、思わせるのがリアリズムの極地だと思うのだが、「まぁ、そうかもな」と冷静に読めてしまった。
おとなしいというか、リアルの凄みがない。
別に私小説ではないのだろうから、「本当にあった話」に拘らず、フィクションの力で乗り越えたって良いのだが、そこまでにガツガツはしていないようだ。
誰か魅力的な人物、それがカワイイのか、セクシーなのか、カッコいいのか、おもしろいのか、その辺はどうとでもなるのだが、そういう存在もいなかった。
同じ大阪を描いた『じゃりン子チエ』だと、ユーモアやペーソス、チエやテツのキャラがあったのだが、そこまでの魅力的人物(多分にアンリアルではあろうが)がいなかった。
やはり大阪を舞台にした『ザ・ファブル』だともっと怖いし、もっとギャグがあり、もっとペーソスもある。
ただ、おそらく作者は、そうしたマンガらしいマンガを求めていない気がするので、だったら、そこはもっと徹底的にリアルで、おそろしいマンガを中上健次的にまで突き詰める方向を取って欲しかったな、と思う。
そのあたりは価値のあるなしではなく、好き嫌いという問題なのかもしれないが…

(No.1273)