マンガばっかり

マンガ批評

ドカベン プロ野球編

★★★

水島新司のライフワークの続編。
ドカベン』を通読し、その後、『大甲子園』があるのだが、そこは家になかったので飛ばして、明訓高校を卒業してプロ野球に入団した山田世代たちの活躍を描いたものを読んでみた。
当時のプロ野球選手が実名で登場し、山田たちと対戦したりもするのだが、このあたりの版権やら肖像権はどうなったのだろう。
水島新司先生の漫画に登場するとなれば、少なからぬ影響を受けただろう選手たちも喜んだとは思うが、そこはオトナの世界。
包括契約のようなものを結んでいたのだろう。
それにしても選手の言動や性格など、本人なら「!」「?」と思うこともあっただろうが、特にそういう騒動については聞いていない。
そういう問題もあってか、水島オリジナルキャラである「山田世代」が、漫画では中心的に活躍することになるのだが、プロ野球という性質上、ひとつひとつの試合を丁寧に描くこともできず、中心的キャラクターも各チームに散らばっているのでいつでもオールスターか日本シリーズをやっていたような感じであった。


選手の日常も描かれるのだが、山田太郎の妹・幸子が途中で急に少女から娘に変化していたり、そうとうな給料ももらっているだろう山田太郎は相変わらず屋根にブロックで重しを置いている畳屋に祖父と妹と同居していたりという、昭和14年生まれの男性漫画家的な弱点も見せてしまっているが、今、読んでみて、もっとも弱点だと思われるのは、幸子をはじめとする女性陣があまりにもザコ扱いされているところだろう。
幸子が岩鬼とくっつきそうで、しかし岩鬼の「ブス好き」(原文ママ)から里中に乗り換えそうだというあたりの、テキトウ過ぎる心理描写はまぁ、よいとしよう。
しかしメジャー希望だった里中の心残りが病気の母を日本に置いていけないことだったことから、「そこはサッちゃんと結婚して母の面倒を見てもらい、そして里中はメジャーを目指せばいい」というキャッチャー・瓢箪の言葉を受け、「それはいい考えだ」と同意し、なんと幸子までそれを自ら提案するというスゴさ!
里中と幸子が結婚するのはいいけれど、病気のお母さんの世話をするため?
舞台は平成15年なのだが、平成の若者の意識って、そんな感じだったのだろうか?
まぁ、令和の今も、基本的には変わっていないのかもしれないが…

(No.1322)