マンガばっかり

マンガ批評

きみの横顔を見ていた

★★★★

いちのへ瑠美による少女マンガ。
一重の女子高生・光と友人の美人女子高生・麻里。
そこにムードメーカーで麻里に近づきたい大谷が絡むというもの。
自分なんて、と思って、吹奏楽でも恋愛でも、誰かに場所を譲ってしまう光の優柔不断と決断の間で物語が展開されている。
『きみはかわいい女の子』でコンプレックスを持った女子が、どうやって自分らしく生きるかを描いてきた作者の新連載で、まだ1巻を読んだだけだが、人気は高いようで、それもうなずける。
ただ、自分に自信がないはずの光なのだが、なんやかんやでカワイイし、吹奏楽部でも地味な頑張りを続けている人なので、そういう人なら黙っていたって他人の評価なんかはどんどん上がっていく。
自信を持って生きるのは大事だが、自信なんてあってもうまくいかない場合が実際は90%くらいあるわけであって、そのあたり、ちょっと作者はずるいな、そして罪作りだな、という気がしないでもない。

かつての少女マンガは容姿も中身もさえないが、性格のよさだけでは負けていないという主人公たちが大逆転するファンタジーだったが、今は、主人公は自分自身の先入観が問題なだけで、容姿も能力も、みんなデフォルトでよかったりする。
さらにずるくなってるわけだな。
ただまぁ、令和時代の女子というのは、昭和とちがって結婚などにも頼らなくても十分に生きていける環境があるわけであって、だから少女マンガを教科書にして、現実の恋愛をどう乗り切ろうか、などという真剣な読者など少数派。
なので、こうしたライトな恋愛漫画が存在できるのかもしれない。
もちろん、これは少年向けマンガも同じで、身長が低かったり、ドジだったりダメだったりする主人公が、山の中で修行して初めて認められていたのに、最近は、山ごもりもせずに才能が開花したり、突然、モテたりするので、甘々で軽々である。
別に誰がいいとか悪いとかではなく、時代が変わった、ということなのかと思う。

(No.1334)