マンガばっかり

マンガ批評

ダンピアのおいしい冒険

★★★★★

トマトスープによる実在した17世紀イギリスの冒険家であるウィリアム・ダンピアの冒険をたどるマンガ。
このマンガがすごい! 2022』に登場し、同書の2023年にも別の歴史ものマンガ『天幕のジャードゥーガル』がランクインしていた作家だったので、最初にこちらを読んでみた。
いかにも歴史ものだよ、という教養臭、そして、わかりやすくおもしろく描いてみたよとでもいわんばかりの(?)マンガっぽいカワイイ絵など、ちょっと手にしにくかったのだが、4巻までを読み終えて思うのは、「そんなことどうでもいいから読め!」ということであった!
ダンピアは博物学者だが海賊でもあった。
当時の海賊というのは、イギリス政府の認める私掠船というもので、公務員ではないのだが、公務員的とは言えないこともないような、兵士であると言えないこともないような存在であったらしく、そんな立場で大航海時代の大洋を駆け巡った人物のようなのだ。
うわ、こんな人が、こんな時代が、これまで大々的に知られることもなくあったのかという自分の迂闊さは恥ずかしくもあるが、殺し合ったと思ったら、友情を叫ぶような某海賊マンガに比べると、もっとマジメで、もっと野蛮で、もっと魅力的な世界であると思う。
マンガは、いわゆる劇画的に戦いだの冒険だのを活写するタイプの手に汗を握る系のものではない。
しかし、たんたんとしながら、事実に基づきながらも、次々に現れる夢やら絶望やらが、いちいち興味深く、あっという間に読んでしまった。
日本史も世界史も、たしかに試験対策に毛が生えたくらいには学んだし、文化史についても、まぁまぁおさらいはしてきた方だと思う。
しかし、海賊という人たちがどんなふうに生活して、どんな風に何かを発見し、生きて、死んでいったのかを具体的に追いかけることもなく、想像することもなかった。
いやぁ、まったくもってトマトスープ氏には、ますます頑張ってほしいと思う!

(No.1344)