マンガばっかり

マンガ批評

恋じゃねえから

★★★★★

渡辺ペコのマンガ。
「恋じゃねえから」というのは、男言葉(言い方古いな)なので、男性のセリフなのかと思ったが、そういうわけではないらしい。
40歳の主婦・茜が中学校時代の塾の先生が彫刻家として有名になり、作品を見に行くと、親友だった紫をモデルにしたとしか思えない裸婦像があった… という物語。
このマンガがすごい! 2023』に13位で入っていたことから買ってみたのだが、その中のコメントにもあったように、2022はフェミニズム的な視点のマンガのランクインが多かったと思う。
まだ1巻しか読んでいないものの、このマンガもそうだ。
そして、それがただ流行だから、というわけではなく、また、思想的に素晴らしいからというだけでなく、マンガとしてもレベルが高く、おもしろく、興味深いと思ってもらえるだろうという意味で、本当にすごい年なのではないかと思う。
フェミニズム的な視点の小説やマンガというものを、これまでいくつか読んできたが、正直言って「わかるけれど説教臭い!」という感じであった。
正しいのだから読みなさい、という感じで…
まさにプロレタリア文学を読むような感じである。
それが文学としても鑑賞に足るものになり、面白いと思えるようになり、必ずしもその思想に共感していない者にとっても「おもしろい!」「ここに書いてある通りだ!」と思わせるようになれば成功だと思う。
その意味で、これは成功していると思う。

これまで女性向けマンガはBLという表現世界の中で男社会で、自分たちの生きる辛さや、その不満のはけ口を作っていたように私は感じていたが、どうも2022あたりをきっかけに、それが違うものになってきたように思う。
LGBTについても、社会全体が容認の方向に傾いているように思うが、それも一部の芸能人や欧米のLGBT有名人たちのマネや影響だというよりも、社会が多様性を認めるようになったからであるように感じる。
日本の政治も経済も、今、本当に最悪の方向に向いており、ますます悪化しそうに思えるのだが、そんな中で、ほとんど唯一、救いようがあるのは、このMeToo的な流れなのではないか、などとも思うのである。
あとは女性たちにとっての憧れの対象であったジャニーズをどう断罪するかが、正念場だと思う。
もしも「あの頃は問題にならなかったから」「今、活躍している人たちには関係ないのだから」ということでジャニーズ存続を求め、許してしまうのならば、守るべきなのは人間ではなく、女性だけだったのか、ということになり、とてもとても残念なのだが…

(No.1351)