マンガばっかり

マンガ批評

無能の人

つげ義春自選集(6)
★★★★★
つげ義春の長編。
ねじ式」はマンガ史に残るスゴイ作品なのだと思う。
が、この「無能の人」は、読まなければ読まないでもいい、というか、読んだところで「これが何だっていうの?」と言われるのがオチではないかと思う。
しかし、こういう生き方(自分から死のうとしない限り人間は生きていくものなので、とりあえず生きているんだという感じの生き方)というのは、全く分からないわけではない、というか、自分はギリギリのところでこっち側に来てしまっているけれど、今にもそっちに行ってしまいそうな、妙にリアルなデジャビュ感がある。
たしかに自分も多摩川で石を売っていたような気がしなくもない、というような…
無能といいながら、おそらく本人は自分が無能だなんて思っていない。
「もしかしたら自分って案外すごいんじゃないか」と実は本気で思っているから無能なのだが、そういう逆立ちしたプライドのようなものも、自分自身を見せつけられているようでイタイのである。
これは、いい意味での私小説的なマンガなのではないかと思う。