マンガばっかり

マンガ批評

チェーザレ


★★★★★
惣領冬実ルネッサンスを描いたマンガ。
評判がいいのは知っていたけれど、ちょっと値段も高いし、という理由で敬遠していた。
ついに手にしてみると、やっぱり傑作!
史実や風俗、建築や衣装がどれくらい忠実に再現されているのか、私に分かるわけもないのだけれど、少なくとも「これはダメだろ!」というようなものは、登場人物が皆、流暢に日本語を使っていること、考え方が近代的でありすぎることなどを除いては見あたらなかった。
初めのうちはちょっととっつきにくい感じもあるかもしれないが、チェーザレ、アンジェロ、ミゲル、ジョバンニがそれぞれキャラとしても魅力的に描かれているし、人々の魂胆や宗教、ルネサンス期の明るさと暗さがきちんと描かれていて、新しい世代にも古い世代にも広く深い人気が出ると思う。
当然のことながら、ほとんど男のみの世界が描かれているのだが、これもNHKの大河ドラマにやたらと女が出て来ては甘ったるいシーンを描くのと違って、スッキリしていてよかったと思う。
で、男のみの世界というと、そういう世界を好んで餌食にしてきた女オタクたちの目にどう映るのかは興味がある。
テニプリで二次創作する人はその後も伸びないが、スラダンで二次創作した人は伸びる」と内輪で囁きあうことがあるのだが、それは、ただ顔やキャラを借りてくるというだけでなく、心理やストーリーを踏まえながらでないとマトモな二次創作ができないから、スラダンで能力を発揮できた人はその後も大作家に成り得るのではないか、ということだ。
この作品には女性の陰が乏しく、「ん?」と思うような同性愛的な言葉やシーンもある。
時代考証やストーリーを踏まえながら、この作品の二次創作を描くことは、とても難しいとは思うが、理論的に不可能ではないし、そうした二次創作には特に興味のない私にとってさえ、もしこの作品の同人誌があるというのなら、ちょっと読んでみたい気がする(チェーザレ×ミゲル、またその反対では簡単すぎるけど)。