マンガばっかり

マンガ批評

七夕の国


★★★★
岩明均のマンガ。
閉鎖的な一つの村が守り続けられてきたものが日本全土をひっくり返す… といったストーリー。
岩明らしいインテリジェンスと残酷さ、ペーソスを感じることのできる作品であったが、良くも悪くも“娯楽作”という気がした。
もちろんマンガを読むことというのは基本的に娯楽なのだが、例えば岩明が現在連載中の「ヒストリエ」などを読めば、自分がこれまでに生きてきたことについて、これから生きていく道について、どうしても考えざるを得ないような気持ちにさせられる。
しかし本作を読んでみても、ナン丸君の気持ち、丸神の里の人々の気持ちに全くシンクロできないのである。
なぜそういうことになったのかを自分なりに考えてみれば、主人公のナン丸君が本当に就職で悩んでいるのかどうかわからないこと、つかず離れずの亜紀さんとの間に何のドラマもおこらないこと、東丸幸子さんのこともちょっとカワイイなと思うだけで何も起こらないこと、ナン丸君の両親やその経済状況・大学生活を心配する様子等々が描かれていないこと…
つまり登場人物がこの世の中で生きていると感じさせるようなエピソードが語られておらず、丸神の里の謎解きばかりにページが割かれていたからではないかと思う。
作者が作り上げた謎を作者自身が謎解きしたら解けるのは当たり前… そこに人間をどう関わらせるかが腕の見せ所なのだと思う。