マンガばっかり

マンガ批評

少女椿

少女椿   改訂版/青林工芸舎/丸尾末広

★★★

丸尾末広のマンガ。
改訂版で1300円、なかなか立派である。
全然知らなかったが、2016年に映画化されたようだ。
まぁ、いろいろなものが映画化されるのは、悪いことじゃない。
内容は、見世物小屋に拾われた少女のエログロ奇談といったもの。
人権的に大丈夫なんだろうか、と思わないことはないが、見世物小屋というのは、実際はともかく、少なくともこのようなイメージで捉えられてきたことは確かで、数年前に博多で見世物小屋を覗いた時も、ここにあるようなテイストを十分に残していたように思う。
ネトウヨの皆さんは、日本の美しい伝統といったことの喧伝に忙しくされているようだが、そうそう美しいものばかりではなかったよ、という教育的な効果はあるだろうと思う。
しらんけど。
(No.1156)

 

MAJOR 2nd

★★★★

満田拓也によるMAJOR(全78巻!)の続編。
1stを全部読んだのだから、その息子がどうこう言う話は読まなくてもいいなと思っていたのだが、読んでみたら、それはそれでけっこう面白かった!
1stでも女子野球部員は出ており、茂野吾郎の妻・清水薫もリトルリーグで活躍する女性だったのだが、1世代を回ってから、1チームに女子が6人というチームで吾郎の息子・大吾を活躍させたりしている。
このチームが県の決勝まで勝ち進むというのは、マンガでなくてはできない展開だとは思うが、1stを読んだ人にも、そうでない人にも、熱く読める物語になっていたと思う。
まぁ、タイトルからして、このあと大吾はメジャーに行くんだろうなぁ。

(No.1155)

あのコの、トリコ。

白石ユキの少女漫画。
美人、イケメン、芸能人… はいはい、好きですよね。
かっこよかったり、かわいかったりするので…
そんな人たちが究極の愛を競い合いながら演技で勝負するという、JKのふわふわした妄想そのもので、得るものはない。
少コミというのは、こういうレベルなのだな。
もちろん、いつの時代だって、難しい純文学レベルの漫画ばかりではないし、ポルノにはポルノの存在意義があって、多くの需要者・愛用者もいる。
ジャニーズや女子アイドルグループの歌詞を、くだらないなどと文句を言ったところでどうしようもないものだけれど、それにしても全巻通読する必要はないだろうと思われるマンガであった。

(No.1154)

甘々と稲妻

★★

雨隠ギドによる累計300万部というそこそこ人気だった料理漫画。
父子家庭で日頃のご飯作りにも四苦八苦する高校教師に教え子でもある料理研究家の娘・小鳥ちゃんがからむという人情マンガ。
さまざまなドラマがありながらも、基本的にみんな大好き、ご飯はおいしい、という予定調和で、12巻の長期連載となったようだ。
しかし、「甘々」とタイトルにもあるように、甘々だし、家族大好き仲良しポルノという感じで、これが好きだといういい人(たぶん)のことを批判する気はさらさらないが、自分にはいらないな、と思えた。
親子愛が絶対的で揺るがなさすぎること、家庭料理が、非常に納得の行くフツウさであることから、『美味しんぼ』や『ソムリエ』のような蘊蓄マンガの醍醐味も感じられず、エンターテイメントとして普通過ぎる気がした。
女子高生と女児を出したらいい、ってわけじゃないんだよな…

(No.1153)

バンビとドール

★★★★

丘上あい、による少女漫画。
捨て子だった主人公・判美と高校生にして子持ちの徹の物語。
捨てられた子どもの気持ちというのは、想像するしかないのだが、なんとか自分の居場所を作らなくてはと思って頑張り続ける姿には、なるほどな、と思わされた。
子持ちの徹の方は、これもまた、なかなか想像しにくいのだが、少し甘々すぎるかな、とは思う。
しかし、5巻完結ということもあって、コンパクトながら、人々の心理もきちんと過不足なく描かれており、悪くない作品だと思った。
少女マンガ10巻説を提唱する者としては、あまり人気が出なくて5巻に抑えられてしまったのではないか、という気がするのだが、長く伸びたところで、どうせ修学旅行があって、そこで昔の彼氏だか彼女だかとばったり会う… みたいな回が数話増えただけじゃないかと思うけどね。

(No.1152)

先生もネット世代

★★★★

那田ここね、によるPIXIV発のマンガ。
PIXIV女子のランキング1位ということだが、なるほどな、と納得できる。
学生時代に女装して採った写真が出回ってしまっている高校教師と、その写真に一目惚れしてしまった生徒、その生徒が「大好きな」友人の男子…
いかにも女子の好きそうな設定。
なかなかないけれども、絶対にないともあり得ない設定で、それだけに自分ならどうだろう、こんな風なことはでいないかな、などと身近ながらも、まず自分に同じ災いは降りかからないだろうというようなものなので気楽に読める。
ネット発マンガは、クオリティ面で厳しい気がしていたが、本作に関してはストーリーや設定、絵、全てが合格点!

(No.1151)

ハッピーシュガーライフ

鍵空とみやき、による純愛サイコホラーで、6巻の帯によれば60万部突破で、アニメ化もされている人気作品らしい。
愛のためなら何をしも許されると錯覚している女子高生が、童女を軟禁しながら溺愛し、自分たちの生活に害を与えそうなにな存在を次々に殺害していく… という話のようだ。
そんなことありえないとか、残酷すぎるとか、そういうお説教をするつもりはないけれど、知能犯なら知能犯らしく、もっと計算しながら生きていくだろうし、8歳の少女だって、そうそう都合よく記憶を無くしたりはしないだろう。
生徒に関係を迫る先生、年上恐怖症になる少年、ぼろぼろになりながら妹を探し続ける少年… と、誰一人をとってもリアリティがなく、どの言動も、まったく響いてこない。
どんなSFでも、どんなファンタジーでもいいけれど、人間のリアリティを少しも描こうとしない創作には意味もないし価値もない。
ふわっとした絵と、内容の残酷さ・酷薄さのギャップで釣ろうというだけにしか思えない。

(No.1150)