マンガばっかり

マンガ批評

ふしぎの国のバード

★★★★★

佐々木大河が明治初期に東北を旅した実在のイギリス人女性であるイザベラ・バードを描いた漫画。
この人のこと、だれか研究したらいいのに、だれかマンガにしたらいいのに、と、思いながら時間がたち、気が付いてみるとマンガ連載が始まっていたようだ。
もちろんそこには漫画なりの脚色があるだろうし、もしかしたらほとんどが創作なのかもしれない。
それにしてもあの時代のイギリス人女性が開国間もない日本を回るなんていうのは、やはりおもしろい。

(No.1170)

アイデン&ティティ

★★★★

みうらじゅん、の自伝的マンガ。
ふらふらとロックバンドをつづけていた三浦に幻影のディランやレノンが現れて… というマンガ。
なかなかに真面目で、不安定なダメダメミュージシャンの気持ちはわからなくもない。
しかし、いつもひょうひょうとしたみうらには、予想外なほどに真面目で堅苦しく、少し後の世代で、音楽でメシを食っていこうと思ったことのある人間としては「ないわ」と思う。
ふざけてバンドをやっていたわけではないけれど、魂の叫びだとか本当の心の声、というようには考えていなかった。
いい曲を作りたい、と思っていただけで。
それが世代ということなのかな…

(No.1169)

 

木曜日のフルット


★★★

石黒正数が「少年チャンピオン」に連載しているゆるギャグ漫画。
見開き1ページずつの連載で、フルットなるへの字口の猫と無職の鯨井早菜先輩、そしてその周辺の物語。
ナンセンスで、その時々の話題を入れながらのゆるゆるした連載は、悪くないと思う。
この漫画のために雑誌を買おうとか、単行本を買いそろえようという人は、あまりいないかもしれないが、本来の漫画の姿というのは、こういうものだったのだろうと思う。

(No.1168)

さくらと先生

★★★

蒼井まもる、が別冊フレンドに連載していた少女マンガ。
タイトル通り、先生と生徒のラブストーリー。
高校3年間をドキドキしながら過ごす話なのだが、非常にリアリスティック。
さくらに恋心を抱いているらしい同級生がいたり、さくらを支援する女友達がいたり、先生を慕う女生徒もいたり…
しかし、大きな事件に発展することもなく5巻で大団円。
うん、いいよ、そういうもんだよ。
もし先生と生徒が恋愛なんかしたら、やはり学校内で2人で話をするのは禁止にするだろうし、家を訪ねるのもナシにするだろう。
こんなストイックな2人なので、大きな事件を起こすこともなく卒業を迎えられたわけだが、ちょっと待て!
ほんとうにリアリスティックに高校3年間を乗り切ってしまったら、エンターテイメントとして、それでいいの? という気がしなくもない。
名探偵コナンの周りで殺人事件が多くおこり過ぎるので、その回数を少なくしたら、それはそれでリアルかもしれないが、「名探偵もの」として大丈夫なのか、と思うはず。
ストイックに3年間を過ごそうとしても、何かの邪魔が入ったり、何かの事故があったりして、ドキドキし、ハラハラし、すれちがったりするからドラマになるんじゃないだろうか…
リアリスティックに描いていることは評価したいけれど、それだけというのは、やはりマンガとしてはどうかな、と思う。

(No.1167)

五等分の花嫁

★★★

春場ねぎ、の人気マンガ。
美人だけれど勉強をしない/できない中野家の五つ子を家庭教師・風太郎が苦労して教える話。
風太郎に抵抗していた娘たちも、一人、また一人と風太郎を他人に思えなくなり、真剣に恋するに至る… と書くと、モテないオタクの願望かよ、きめぇ、と言われてしまいそうだ。
絵を見て、1巻も読んで、あぁあ、と思った。
が、頑張って読み進めると、単純にハーレム万歳にはなっていない。
少年マガジン連載だけに、萌え狙いのストーリーやカットは枚挙にいとまがないのだが、それでも五人に極端なキャラ設定をさせたり、ラッキースケベを連続させたりすることなく、持ち前の性格や資質はありながらも、なんとか向上し、変えていこうと頑張る姿は、まぁ許容範囲かな、とは思う。
巻が進むと、ちょっと風太郎のモテ度が異常になりすぎる…

(No.1166)

 

めだかボックス

★★

西尾維新暁月あきら、のマンガ。
胸がはみ出すようなヒロインは、スタイルとしてどうにも不格好としか思えないのだが、それはそれとして成績も運動神経も抜群で、異能の持主である黒神めだか
高飛車なもの言いながら、利他的精神に富み、愛さないではいられないという設定。
これは、なるほどと思う。
この黒神が生徒会長として、いろいろな難問を解決する話かと思っていたが、だんだんバトルが繰り返されるストーリーとなり、あまりにも異能力すぎて(ほぼジョジョにおけるスタンド)、出て来る人物もあまりにも異常すぎて、ほとんどもうどうでもいい感じ。
こういうのが人気マンガなのだというから、まぁ、とてもマンガなんて描けないし、編集者にもなれないよなぁ。
ならんけど…

(No.1165)

その女、ジルバ

★★★★★

有馬しのぶ、のマンガ。
40歳となってスーパーの倉庫係に回された女・笛吹新。
恋人とも別れ、人生に何もいいことなどないと思ったところで、熟女バー「OLD JACK & ROSE」を発見。
見習いで働くうちに「ギャル」と呼ばれ、価値観の転倒した世界で自分の道を見つける…
1巻まで読んだところで、もてない男が別世界で急にモテる話の逆バージョンかと思って、しばらく読まずにいた。
が、巻が進むにつれて創業者であるジルバの来歴、バーで働く女性たちの身の上、ことにブラジル移民の秘話が語られる頃になると、ただのモテ話では終わらなくなってくる。
いよいよあらら(新の源氏名)にも恋人登場か、とも思われる5巻で完結というのも、非常に潔くていいと思う。

(No.1164)