マンガばっかり

マンガ批評

九龍ジェネリックロマンス

★★★★

眉月じゅん、による異郷ラブコメSF。
『恋は雨あがりのように』の眉月の新連載。
舞台は香港で、不動産会社に勤めるしがない中年男と、アラサー女子のラブコメ
あちこちに「恋雨」の雰囲気を残しながらも、舞台は香港だし、主人公はスイカの後のタバコに幸福を感じるタイプで、橘あきらとはだいぶ違う。
ただの外国ラブコメではなく、そこにはSF要素も入っており、なかなか期待できそう。
『この漫画がスゴイ!』でも上位に入っていたが、ヒット作の後での連載が評価されれば、漫画家としての実力が認められると思う。
(No.1211)

大阪環状結界都市

★★★

白井弓子によるSFマンガ。
日本SF大賞受賞作家が大阪を舞台にして描くマンガで、上橋菜穂子絶賛と帯にあるが、なるほど、と思えるもの。
全3巻に収められたマンガだが、これだけきちんと設定をしたならば、もっとじっくり、じわじわとストーリーを編んでいけばよかったのに、流れが早すぎて、SF的、あるいは怪奇譚的な気分を味わえないままに終わってしまった感じ。
ストーリーの密度の濃さから12巻あたりが適量だろうか…
こんな人がいたのか、という思い。

(No.1210)

マスターキートン

★★★★

浦沢直樹の代表作。
今さらながらマスターキートンを通読。
考古学者にして保険の調査員の日英ハーフであるキートン氏が世界を駆け巡りながら問題解決するという話。
政治や歴史蘊蓄を使いながらの大活躍は、「ゴルゴ13」や「三つ目が通る」などを思い出させる。
そもそも殆どが一話完結なので、話が簡単にまとまり過ぎで、キートンの万能さ、タイミングの良さが悪目立ちしてしまって、浅い、という印象は否めない。
ブルゴーニュ地方のシャトーで起こった事件(ブルゴーニュだと普通はドメーヌ)だとか、そういうところも信用をなくすんだよな…
能力があるのに娘には頭が上がらないとか、大学教員としては非常勤だとか、そのあたりの設定も「またかよ感」があるが、それぞれの挿話が基本的によくできているものではあるので、10話完結くらいのペースで進めた方がよかったように思う。
キートンの別れた妻も最後まで姿を現さなかったが、これだけでも話の10くらい作れたのになぁ、と…

(No.1209)

 

まくむすび

★★★★

保谷伸による高校演劇マンガ。
『アクタージュ』(連載中止になってしまったけれど)や『累』というマンガもあり、また古くは『七色いんこ』や『ガラスの仮面』というものもあって、演劇マンガはかならずしも注目されていなかったわけではない。
しかし、『いんこ』や『ガラカメ』では、「圧倒的な演技力」というだけで、具体的・論理的にどこがどう圧倒的なのかについて語らなかったが、近年は、それでは難しいということがようやくマンガ界でも定着してきたように思う。
あまり論理的に書かれ過ぎても、それはそれで醒めてしまうのだが、これは圧倒的な力や根性で魔球を生み出した野球漫画が、練習法や心理戦、技術で勝利を目指す方向に変わり始めていることとも一致しているかもしれない。

(No.1208)

シジュウカラ

★★★★★

酒井恵理によるオトナ漫画。
シジュウカラはもちろん四十雀から来ているのだろうが、主人公である女性漫画家の年齢でもあるのだろう。
漫画家を志しながら、アシスタントに甘んじ、主婦の座で満足していた忍は、ネットで自分の書いた漫画が売れ始めているのを機に漫画家活動を再開する。
アシスタントになったのは、近所に住む美青年。
実はダンナのかつての浮気相手の子であり、青年はひそかに忍の家の崩壊を狙っていた。
しかし、青年は、実は忍の大ファンでもあり、恨みよりも忍への共感と愛が強くなり、忍の方もだんだんと気持ちが傾いていく…
あり得ない設定ではないなと思う。
オバサンと美青年の愛なんてないから、という風には単純に言いきれない!
こういうオトナな漫画。
美青年との不倫、すれちがい、偶然…
そういういかにも大衆的だと言われそうなものをまといながらも、しっかりとこの時代に生きる人について描こうとしていて、頑張ってほしいなと思う。

(No.1207)

あちらこちらぼくら

★★★

たなと、による学園マンガ。
派手めな元・ハンドボール部員・真嶋とサブカル地味坊主頭・園木を中心にした学園スケッチ。
青年コミック誌ヒバナ」に連載しているということもあって、中身をまるで知らずに買ったのだが、BLだな。
しかし、男子高生の日常生活を、誇張気味に仲良しに描いたりするようなものとは違って、わりにリアルで共感できるところはあった。
しかし、わりと共感できるところはあるにしても、それがマンガとして面白いのかというと、そういうわけでもない。
ジャニーズタレントや韓流タレントがわちゃわちゃと出て来る番組を見るようなもので、それ自体について、いやらしいともおぞましいとも思わないながら、積極的に見続けたり、ましてや応援するかというと全くそういう気にもならないといった体のもので、一般男子にはあまりウケないかもしれないなと思う。

(No.1206)

君は放課後インソムニア

★★★★★

オジロマコトによる不眠症の高校男女が不眠をきっかけにして接近するが、くつろげる場所として校内の天文部部室に入り浸るうちに、いつしか天文部部員となる、という話。
インソムニア? と思ったが不眠症のことらしい。
まぁ、よくある、というか、ありそうな話ではあるが、中見がどこにでもいる感じの男子高校生であり、曲もどこにでもいる感じの女子高校生であること。
二人とも見た目がいいとは言えないが、かといってどうしようもないというほどではない。
水泳部員の曲は、明るく元気で、友人も多く、中見は中見で友達が少ないにしても、いないわけではないし、勉強はかなりできる…
そういう最高過ぎず、クズ過ぎない二人だから、微妙に接近できるのだし、共感を得られているのだと思う。
石川県七尾市というビミョウな設定もいいと思う。
作者は埼玉出身の女性漫画家らしいが、旅行の途中で七尾高校天体望遠鏡を見て、そこから捜索が始まったとのこと。

(No.1205)