マンガばっかり

マンガ批評

瞬きもせず

★★★

紡木たく、の代表作。
神奈川県出身の著者が、わざわざ山口県に取材に向かい、その後も移り住んだこともあるという。
また、wikipedia知識だが、くらもちふさこ天然コケッコー』は紡木のこの作品の成功から島根を舞台にすることができたのだ、という。
1987年から1990年の連載だというが、携帯を使っていないこと以外、大きな違和感はなく読み進めることができた。
2014年には『ホットロード』が能年の主演で、そこそこの人気があったようなので、案外、若い人達にも受け入れられるのかもしれない。
アマゾンの評価を見ると、ホットロードも瞬きもせずも高評価であったが、「なつかしかった」「あの頃がよみがえります」というコメントが多く、あぁ、そういうことね、と。
紡木といえば、ハイキーで有名な画風であり、顔の輪郭でさえ、白い背景と一緒になってしまうような感じで、とにかくまぶしい!
そんな絵であり、また、今回文庫で読んだこともあって、とても絵が読みにくかった。
まぁ、老眼ということもあるのだろうけれど、そんなわけで、十分に読み込めたとも言えないのだが、とにかく地方に生まれ育ったものが、そのまま地方で行くことの辛さを、神奈川出身の作者が、よくここまで描いてくれたな、という気はする。

(No.1271)

マッシュル MASHLE

★★★★★

甲本一がジャンプに連載している王道もの。
舞台は魔法学校…
ということで、ハリーポッターをパクりながらの半分ギャグ調で話が展開する。
主人公のマッシュ・バーンデッドは魔法学校に通うものの、なんと魔法が使えない。
しかし、超絶なパワーによって魔法よりもマジカルなパワーで道を切り開いていく。
主人公のおバカ感。
しかし、だからこその素朴すぎる正義感が楽しい!
ただ、6巻にして、すでにずいぶんたくさんのバトルをして、ずいぶん高いところまで戦いのレベルが上がってきているが、この先、今のテンションのまま、どこまで行けるのかが少し不安ではあるな…

(No.1270)

アンサングシンデレラ

★★★★★

荒井ママレによる薬剤師マンガ。
大人気テレビドラマの原作なのだそうだが、調べてみると主人公が石原さとみ、友人が西野七瀬田中圭も出てるわ… ふーん。
薬剤師というと、薬局で白衣を着て、何かの薬を薦める人、あるいは病院のそばの薬局で処方箋のとおりの薬を運んでくる人… というくらいで、とても彼らに医療や薬の知識があって、われわれの生活を守ってくれている人だという意識がない。
しかも、コンビニの店員ほどの日常性があるわけでもないので、マンガ化されることも少なかったのだと思う。
焼津市立総合病院薬剤科の富野浩充さんの原案らしいが、それだけにリアルさと正確さは担保されているのだろう。
実際の医療現場でここまでに薬剤師が活躍することは少ないにしても、マンガを読む限り、活躍して欲しい職種だなと思う。
医療マンガや看護師マンガは少なくなく、ヒット作も多いが、薬剤師マンガにも頑張ってほしいな、と思う。

(No.1269)

憂国のモリアーティ

★★

三好輝によるアニメ化もされ、舞台化もされているという人気マンガ。
14巻まで読んだが、うーん、と思った。
コナン・ドイルのホームズシリーズを元に構成されているというストーリーなので、おもしろくないはずはないのだが、どうにも十分に熟成されないままにマンガになってしまっている気がしてならない。
たとえばホームズは天才的な推理能力、観察力があるはずなのに、女優アイリーンが男装していることに気付かない。
アイリーンは美人女優として通用する肉体の持ち主、つまり細身で、胸もあって… なのだが、そんな女性が誰にも気づかれないように男性になりすますことは不可能だと思うのだが…
たとえば宝塚の男役は男よりも男らしいのだが、リアル世界で、男装した彼女を男と見間違える人はいない。
また、ホームズが相棒であるワトソンにむかって「俺はお前のことを本当の友人だと思っている」と屋根の上で突然に告白するシーンがあるのだが、面倒くさがり屋で、なかなか本心を打ち明けるようなキャラではないホームズが、そんなことをいうとは思えない。
そもそも、ワトソンが突然結婚を決めてしまい、フィアンセのことが好きでたまらない、などと描かれているのも、10巻あたりまで、ワトソンにそんなそぶりは一つもなかったことから、「だまされているんだろうな」としか思えなかったし、そんなワトソンとフィアンセのことを、篤い友情から命がけで守ろうとする… というホームズについても、「あぁ、きっと演技で、信じたフリをしているんだろうなぁ」としか読めなかった。
宿敵であるモリアーティに対しても、ホームズは「ライバルでありながら本当の友人だと思っていた」などと告白し、それが二人に共通した思いであったことも確認し合うのだが、ホームズもモリアーティも、そんなことを言うようなキャラとして描かれてはいなかった!
いや、だからこそ感動するんじゃないか、と、たぶんファンの女子たちは言うのだろうが、それは読者の女子たちが、最初から「男性同士の友情もの」「ライバルが実は最大の友人」という解釈格子で深読みしていたのと合致していただけなのだと思う。
作者はそのあたりを200%計算の上で描いているのだろうが、もちろん、そういうことだってあり得るとは思うものの、それなら、そこに至るまでの過程を、もっときちんと描くべきだと思う。
男子向けでも女子向けでも圧倒的な支持を持つマンガやアニメというのは、どうにもそのあたりの説明が不足というかロジックが不足していて、なかなかハマれない。
まぁ、そんなことをしなくても、熱狂的なファンが付いているのだから余計なお世話ということなだろうけれど…

(No.1268)

東京卍リベンジャーズ

★★★★★

和久井健による大人気ヤンキー漫画。
2021年に一番支持があった漫画ではないかと思う。
東京を舞台にしたヤンキー少年の攻防にタイムリープを交えたSFヤンキー漫画で、頭も悪いし、何よりケンカも弱い花垣武道が、恋人だった橘ヒナタを守るために12年前と現在を行き来するという設定。
カリスマヤンキーの佐野万次郎(マイキー)をはじめ、なかなかいいと思う。
幼稚園時代、小学校時代の仲間が、こんなにヤンキーになって、殴り合い、殺し合うようになるのかと思うと、恐ろしい世界観だとは思うが、そうした現実的な話を置けば、タケミチのただただ諦めないということの強さが、マイキーらヤンキーたちの共感を得て、友情と信頼の輪を広げていくあたりは、なぜか海賊王になるというだけで暴力の限りを尽くす『One Piece』よりも説得力があるように感じた。
21巻で天竺篇が完結。
22巻からはタイムリープ能力を失ったタケミチが、なぜか悪の限りを尽くすマイキーと向き合うこととなるようだが、この進み方も、蛇足感、無理な長編化感はない。
そういうあたりもいいと思う。

(No.1267)

チ。 地球の運動について

★★★★

魚豊のマンガ。
寿司屋か魚屋の屋号としか思えないペンネーム(読み方は、ウオトらしい)なのだが、地動説をめぐる信仰と学問の間に生きる人たちを描いたマンガである。
どれくらいの史実、また科学史を踏まえているのかはわからないが、これがマンガ大賞の上位に入るというのは、つくづく日本マンガの深さを思い知らされる。
ただ、信仰と学問的真実の間で苦悩する(つまり命がかかっている)人物たちを描く際に、妙にラノベチックに盛り上げすぎているのは、気にならなくもない。
若い世代には、だからこそウケたのかもしれないが、ここまで盛り上げないと分かってくれないのかな、というのは、少し淋しく感じたりもした。
しかし、原発村やコロナ村の周辺を覗いてみても、別に殺されるというわけでもないだろうに、よくもよくも数多の御用学者やら評論家やらがいるもんだよなぁ、と思わされる。
たとえ御用学者と言われても、俺はその道を貫くぜ、というのなら、或る意味カッコよく、すがすがしかったりもするんだけどねぇ。

(No.1266)

 

弱虫ペダルSPARE BIKE

★★★★

渡辺航による『弱虫ペダル』のアナザーストーリー。
弱ペダに登場するそれぞれの人物の秘話集。
別冊少年チャンピオン連載作品で、どれも、よくできていると思う。
もっと他に扱ってもいい人もいるような、そして、本編でもほとんど憶えていないような人物もいるような…
弱ペダで二次創作をしている人には、本家によるサイドストーリーに対して、どう思うのだろう。
二次創作と言えば、巻島と東堂のエピソードはライバル同士の間に芽生えた友情というより、ほぼ同性愛。
まさか腐女子ウケを狙ったものとも思えないけれど…

(No.1265)