マンガばっかり

マンガ批評

歯医者さん、あタってます!

★★★

山崎将によるお下劣少女漫画(?)。
「ジャンプ+」連載なので青年漫画というべきなのかもしれないが、男性っぽい名義の作者もおそらくはフェイクだろうし、絵柄も、また、ちょっとお下劣な内容などにしても、女子による女子のための漫画であった気がする。
内容自体も、結局のところ「男性×男性」というジェンダーセクシャリティにフォーカスされていて、そんなあたりも「少年ジャンプ」を愛読してきた女性には受け入れやすかったのかと思う。
男性読者としては肩透かしをくらったような感じもあったが、今なお残る漫画における「ジェンダー」について考える素材としては、十二分に興味深い作品だったように思う。

(No.1373)

メンタル強め美女白川さん

★★★

獅子による人気マンガ。
ドラマ化もされたらしいのだが、4巻になるとマンガではなく、ほとんどイラスト付きの自己啓発本になってしまっていて、こうなるとマンガ論としては論じられない世界… 
ともあれ、白川さん、悪くないと思う。
いろいろなことを言われても「自分はそう思わない」と思うだけで、争いごともなく生きていける!
タイトルからすると、もっと「強いメンタル」の人なのかと思ったが、そういうわけではなく、「普通のメンタルの持ち主が、どうやってこの世の中で明るく気分よく暮らしていくか」というものだったように思う。
ただ、全面賛成しにくいのは、大きな悪に立ち向かっていかなければならない時が、人にはどうしたってあるんじゃないか、ということ。
たとえば、伊藤詩織さんなど、メンタルの強い美女だったと思うが、あのような場合、白川さんだったらどうしただろう。
問題に対して真っ向から挑まない限り、泣き寝入りさせられただけではないのだろうか?
また、25歳の美女OLだったからこそ、白川さんのように生きてもいけるのだろうけれど、もし45歳管理職女性だったりした場合、もし「頑張っているかもしれないけれど成果が上がっていない部下」がいたら、やはり勤務評価を悪く付けなければならないと思うし、自分もあれやこれやと上からも下からもささやかれているだろうと思う。
気持ちの持ちようとして賛成できるところは多いし、これで元気が出て学校や仕事に行ける人がでてきるのも事実なのかもしれないが、どうしても、その適用範囲は限られているように思えてしまうのである。

(No.1372)

あかね噺

★★★★★

末永裕樹・馬上鷹将による落語女子マンガ。
落語を扱ったマンガは、近年、少なからずあったが、「週刊少年ジャンプ」に連載中のこのマンガは、きちんと伝統的な落語をきちんとあつかっていながらも最大限のエンタメにしあげていて、とてもよいと思う。
「スポ根」ならぬ「落語根性もの」=「落根」とでも名付けたくなるような手に汗を握るマンガになっている。
父である落語家は真打への昇進試験にてまさかの破門。
なぜ父が破門になったのか、破門にした落語会の重鎮・阿良川一生が許せないとばかりに入門するのが女子高生・朱音。
抜群の能力と向こうっ気の強さを持つ朱音だが、広くて奥深い落語の世界には知らないことばかり。
少しずつステップアップする日々が続く…
5巻まで読んだところだが、これは目が離せない。

(No.1371)

エンジェル・トランペット

★★★★

赤石路代による長編マンガ。
大震災の後、実験中だったウィルスが拡散し、それを吸った子どもたちが死亡、もしくは脳内の或る働きが異常によくなるという現象が起こり、政府は異能の子どもたちを隔離し、事件をなかったことにしようとする… という設定。
東日本大震災と、その後の政府のさまざまな隠蔽工作などから思いついたストーリーなのだろう。
東日本大震災直後の連載なので、コロナの騒動については知らなかったはずなのだが、そのあたりの政治もの、現代ものとしても読めるマンガであった。
月刊flowers」連載なので、少し年齢層の高い読者を想定しているのだろうが、それにしては政府や警察などのシステムがうすっぺらく、この程度のものであれば、異能の存在ではなくても簡単に転覆できそうである。
また、絵も80年代あたりの感じを漂わせており、これについては最後まで違和感が残ってしまった。
調べてみると作者は昭和34年生まれの63歳だとのことで、浦和一女から武蔵野美大に進学して漫画家になり、現在まで活動していることを思えば、なんとも立派なもの。
また、それだけに立派な作品を描いていると思う。

(No.1370)

リミット

★★★

すえのぶけいこ、のヒット作品。
限界状況における高校生のサバイバル物語。
変に長引かせることもなく6巻で終えたのはいいかもしれないが、その短さの故もあってか入り込みにくかった気もする。
高校生なのだから、みな何かを抱えながら生きているとは思うものの、1日か2日で、殺すの殺されるのという状況にはならないんじゃないだろうか?
救助されるという可能性を信じているのだからシャバに戻ってからのことを考えるのが普通で、自分が生きていくためにも、まずは共同で生きていく道を探るものではないのだろうか?
救助の道が全くもってないような、絶望的な、たとえば『自殺島』や『ペリリュー』のような状況であれば、殺し合うというようなこともあるかもしれないが、どうにもそのようには思えないのである。
まぁ、そんなことをつべこべいわずにガッと読めるのが、「若い読者」というものなのかもしれない…

(No.1369)

山田くんとLv999の恋をする

★★★★

ましろ、によるネトゲで知り合った二人の恋物語
「大丈夫かな?」と思って読み始めたのだが、大丈夫だった!
アニメ化もされているという人気作だが、ネットゲームという、イマドキのアイテムを使いながら、その新しさ、しかし恋愛マンガとしても十分に納得できるものでもあり、良い作品であったように思う。
イケメン高校生の山田くんと、ネトゲ初心者・茜の話なのだが、ゲームの達人であり、進学校に通う山田は人との距離の取り方のわからぬ、しかし、決して悪いヤツではないという人間であり、群馬県高崎市出身の大学生・茜は、天性のお人好しというか、どんな人間であっても、まっすぐに向き合えばきっと分かり合うことができるという思いを持っており、山田には山だの危なさがあり、茜にも茜なりの危なさはありながらも、二人が決して、相手のルックスだけに惹かれたわけではないのだということがじんわりと伝わってくる筆致であり、それがネトゲという今風のアイテムをまとっているのだから、それはこれを名作と言わなければバチがああたるというものだ!
やはりちゃんとしたマンガには、ちゃんとしたファンがつき、ちゃんとした人気が出るんだな、ということのようである。
おぉ、今日はまともなシメククリでよかった!

(no.1368)

ローズ ローズィ ローズフル バッド

★★★★★

いくえみ綾が現在連載している作品。
今度はアラフォーの女性漫画家が主人公。
「ファブ郎」なるキャラ漫画の連載を続けるも、胸キュンの少女マンガを描きたい気持ちを棄てることができない。
本人に恋愛要素が少ないこともあってネームにも苦労しているところで編集者のバツイチと急速に接近し、恋愛漫画も人気が急上昇する…
中年バーテンダーかと思えば、次は中年の女性漫画家というふり幅の広さ、しかし堅実なリアリティは、ほんとうにいくえみの凄さを感じさせる。
どこに行くのか予想もつきにくいタイトルもいつものことだが、令和の或る世界を、的確に描いてくれるものと期待したい。

(No.1367)